2月22日(木)に恵比寿リキッドルームで行われたDAZN World Freestyle Masters。男子部門には世界トップレベルの16人が出場し、世界ランク1位のMichryc(ポーランド)が優勝を果たした。

日本からは世界ランク7位のYoが参戦し、初戦で世界ランク10位のKälldoff(スウェーデン)と対戦したが、1-2の判定で惜しくも敗れた。

 

今大会の目標を「優勝」と語っていたものの、まさかの初戦敗退に終わったYo。大会期間中に感じた、世界との決定的な差とは?

勝敗を分けた1つのミス

「あの戦い方がベストだったんじゃないかとは思う」

決勝トーナメント初戦のKälldoff戦を振り返り、Yoはこう語った。

最初の1ターン目で、先攻のKälldoffはノータッチの連続コンボを決め、最後は得意の360°ATWでしっかりと締めを成功させた。対するYoは、得意の躍動感あるシッティングで攻め、最後の締め技も問題なく決まった。

 

ここまではほぼ互角の戦いを演じたものの、中盤の2ターン目で歯車が狂う。先攻のKälldoffはシッティングとアッパーを交えたフローを披露した。最後の締めではオリジナリティを発揮したものの、特に目立ったトリックはなく、後攻のYoにとって2ターン目はまさに“攻めどころ”だった。

そして迎えた2ターン目、Yoは3DEXの中で最も得意なエルド・アラウンド・ザ・ワールドをチョイスしたが、これがミスに終わってしまう。

「まずエルドはミスしないと思っていた。いつもはミスした時の対策も考えるけど、何も考えていなくてプランが完璧に崩れた」

当初はエアームーブを20秒、シッティングを10秒というような構成を練っていたものの、その1ミスが響き「頭が真っ白になった」。ミスの後は1ターン目と同じようなシッティングで攻めたが、肝心の締めが決まらず。最後は約10秒を残してムーブを止めてしまった。

「自分の中では30秒やった感覚があった。結果的に時間を残したのはマイナス評価になっただろうし、敗因は2ターン目にあったと思う」

 

3ターン目は両者ともにエアームーブで攻め合い、Källdoffは彼のシグネチャートリックともいえる720°ATW入りのコンボを披露。それに対してYoは、スカラ・アラウンド・ザ・ワールド始動のオリジナリティ溢れるコンボで会場を沸かせた。

「あの流れだと、いつもは3ターン目もグダってしまっていたはずだけど、良く巻き返せたとは思う」

3ターン目は巻き返しに成功したが、結果的には2ターン目のミスが命取りとなり、1-2の判定で初戦敗退に終わった。

世界大会を勝ち抜く上での“前提条件”

バトル直後にステージ上で行われたインタビューで、Yoは観客に向けて以下のように語った。

「本当にすいませんでした。めちゃくちゃいろんな人を呼んだのに、不甲斐ない結果で申し訳ないです。世界一になるまでこのステージにずっといます」

 

大会に向けて万全な準備を積んできたと自負していたが、まさかの初戦敗退。その背景には、プレッシャーに押しつぶされた部分もあった。

「あの日はプレッシャーしか感じていなくて、裏でずっと気持ち悪くなっていて。体が震えていたし、ビビっていた」

今まで世界大会での経験を積んできたYoだが、自国開催の世界大会で、観客の期待を一身に背負うプレッシャーは想像以上のものだったはず。だが、そのプレッシャー以上にYoが感じていたのは、世界とのレベルの差だった。

「正直、これは超えられないんじゃないかと思うくらい世界の壁を感じた。大会前に彼らと練習している時から、食らいついていくのが精一杯で。あのプレッシャーの中でもベストは尽くせていたと思うけど、ベストの度合いが世界に追いついていなかった」

Yoが最後に出場した世界大会は、昨年8月のSUPER BALLだった。それから今大会までは半年間という長いスパンがあったが、その間に世界は想像以上にレベルアップしていた。Yoも準備段階でベストを尽くしてきたが、そのベストの度合いを履き違えていた。

今まで日本人は、エアームーブのスキルでは世界に劣っていても、オリジナリティ溢れるスタイルで世界に対抗してきた。

もちろん、スタイルが確立されていることは日本人の強みではある。ただ、そのスタイルも、結局は世界のスキルの高さに押しつぶされてしまっているのが現状ともいえる。

「Michryc(ポーランド)にしろ、スタイルは確立されているものの、ある意味スキルの次元だと思う。クリエイティブだけど、スキルフル。スキルフルなスタイルでないと、バトルでは勝てないと感じた」

スキルが高いことは、世界にとっては“前提条件”である。その条件をクリアした上で、日本人が得意なスタイルを確立することが、世界大会を勝ち抜く上では求められている。

周囲の期待を胸に

とはいえ、世界のハードコアなスキルに日本人が追いつくには、生まれ持った身体能力の差という問題もある。その根本的な差を埋めるために、Yoは肉体改造に取り組んでいる。

「大会の翌月からジムに通っています。このままでは彼らが生まれ持ったものに追いつけないですし、そこにある意味で限界を感じたので。どれだけ練習してスキルを身につけても、結局は本番で余裕を持ってできるくらいのパワーがないと」

世界大会を勝ち抜く上では、30秒×3ターンをフルスロットルで戦える体力や持久力も求められている。Yoは今までも身体を作る必要性を感じてはいたが、今大会でそれが確信に変わったという。

「あれだけ練習してきたのに歯が立たなかったので、自分一人の力では無理だと思った。向こうの体格やバネに追いつくには、プロの力を借りる必要がある」

痛感した悔しさを糧に、まずは今夏のSUPER BALLに向けて、世界で戦えるスキルを身につけていく。

 

優勝を目標に掲げた中で、思うような結果は残せなかったものの、課題が明白になったことは今後に向けて大きな収穫といえる。

「今までのやり方では通用しないし、新しいやり方でやらないと。これに気づけたのは大きいし、今後も世界大会に出続けて、いろいろな発見をしていって、周りにも伝えていきたい」

 

今大会では、2016年にRed Bull Street Styleを制したCharly(アルゼンチン)も参戦予定だったが、怪我で出場を辞退した。彼が出場していれば、よりハイレベルな大会となっていたことが予想される。

そういった意味では、今回Yoが追いつきたいと思ったレベルよりも、今後はさらに上の世界が待ち受けているのかもしれない。

「もっと上のステージを見据えて、自分がリードしていくくらいになっていかないと。正直、心が折れた部分もあったけど、それでもみんなは『Yoにしかできないことだから』『こんなチャンスがあるのはお前だけ』と言ってくれたし、少しでも可能性があるのなら諦めたくない」

周囲の期待を胸に、弱冠20歳の若武者は世界に挑み続ける。

投稿者プロフィール

Hiromu Tanaka
Hiromu Tanaka
中学生からフリースタイルフットボールを始め、大会やパフォーマンスなどに積極的に参加。現在はフリーランスで、スポーツを中心に様々なWebコンテンツを配信。JF3の運営をはじめ、フリースタイルフットボール界を盛り上げるべく、多岐に渡る活動を行っている。