フットバッグ世界王者から見た、日本のフリースタイルフットボール

大会における“メンタル面”の影響

そのほかに今年のJFFCで印象に残ったバトルを伺うと、トップ16のYo vs Kazaneが挙がった。

「残念ながら間に合わなくて生では見れなかったですが、動画で見るとYoのキレは凄かったです」

大会前にはKo-sukeの優勝を予想し、そこにYoがどこまで食らいついていけるか、と考えていたという。結果的にその優勝予想は的中したが、Yoは準決勝のHiro-K戦ではミスも目立ち、出し切れなかった印象があった。

 

石田はKo-suke、Yoの両選手の印象について、次のように語っている。

「Ko-sukeは、やはりネタの温存の仕方が上手かったと思います。フルでやらなくても勝ちきれますし、ミスがとにかく少ないです。

YoはSUPER BALLの時もそうですが、ハマった時は見ていてかなり面白いです。彼も含め、日本人は外国人と比べて身長が低いので、ボールタッチ数が多くなります。その分、動きがものすごく早いですし、強みになっているのではないでしょうか」

 

トップ4にはKo-suke、Hiro-K、Yo、Tokuraと順当な顔ぶれが揃った。石田はトップ16のバトルを見て、選手たちの“気持ちの差”を感じたという。

「やはりトップ16くらいだと、気持ち的に『本気で優勝したい』人と『やり切れれば良い』人の2つに分かれているような気はしました。トップ4を見ると、やはり本気で優勝を狙っていた人が残った印象があります。

メンタル的な面は勝負に影響しますし、選手の気持ちは観客にも伝わっていると思います」

もちろん、大会としても本気で日本一を狙う人が増えてきたほうが成熟はするだろう。そういう意味では、トップ16のYo vs Kazaneのように、気持ちをもっと前面に見せるプレーヤーが出てくると、バトルはより一層面白くなるはず。

 

また、ベスト8に進出したDaikichiは、彼が中学生の時に、石田がフットバッグを教えた経験があるという。17歳となったDaikichiの活躍については「あの時の中学生がここまで来たのかと思うと、感慨深いものがあった」と振り返っている。

 

日本と世界での違った楽しみ方

フットバッグは、フリースタイルフットボールに比べると“個性”があまり見られない。基本的に大会で披露する技は決まっており、フォーム以外に個々のスタイルの違いは少ない。

フリースタイルフットボールは技のバリエーションが多いですし、服装も人それぞれでかっこよさがあります。そのかっこよさは、今まで先陣を切ってきた人たちが、背中で示してきたからこそだと思いますし、フットバッグも見習うところはあります」

 

特に日本は、個々のスタイルが色濃く表れていて、見どころが多い。それに対して世界は、いかにスキルの難易度を競うかが主流で、そういった意味ではフットバッグと似ているのかもしれない。

石田は日本人の印象について「日本人はスキルを重視する世界の流れに、スタイルで対抗しているようなイメージがある」と述べており、特にYoに関しては、スキルもスタイルも兼ね備えているという点で「世界と日本の中間にいるような存在」と評価している。

 

Yoは、2月に東京で開催された世界大会「DAZN World Freestyle Masters」で、初戦敗退という悔しい結果に終わった。そして、世界へのリベンジを誓って臨んだ8月のSUPER BALLでは、Battle部門で日本人初となる表彰台入りを果たした。

石田は2月のDAZN World Freestyle Mastersを現地観戦していたが、当時のYoと比べて、SUPER BALLではメンタル面での成長が見られたという。

「彼はDAZN World Freestyle Mastersで悔しい想いをしましたけど、SUPER BALLではテンションが上がりながらも冷静に自分をコントロールできていて、メンタル的にも充実していた印象はありました」

 

一方で、SUPER BALLで優勝したErlend(ノルウェー)のバトルを見た印象としては「やはり高いレベルで安定したムーブができる選手は強い」とコメントした。

SUPER BALLはライブストリーミングで生放送されていたが、現地の実況・解説に耳を傾けても、ミスには敏感な印象があった。実際に、ジャッジも日本に比べるとドロップ数が重要視されているように思える。

 

JFFCでは、もちろん安定感も重要だが、それに加えてチャレンジする姿勢も評価対象にあった。このことからも、日本と世界のフリースタイルフットボールは異なることが分かる。

「JFFCとSUPER BALL、日本と世界では、フリースタイルフットボールの違った楽しみ方ができます。今後、フリースタイルフットボール界全体がどのような方向に向かっていくのかは気になるところです」

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投稿者プロフィール

Hiromu Tanaka
Hiromu Tanaka
中学生からフリースタイルフットボールを始め、大会やパフォーマンスなどに積極的に参加。現在はフリーランスで、スポーツを中心に様々なWebコンテンツを配信。JF3の運営をはじめ、フリースタイルフットボール界を盛り上げるべく、多岐に渡る活動を行っている。

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