“奇跡”の優勝を経て。Hiro-Kが世界との戦いで感じたこと

2017年4月にフランスで開催された国際大会「FOOTSTYLE CUP 2017」。世界中から多くの有名フリースタイラーが集った同大会には、2014年日本チャンピオンのHiro-Kが招待され、ただ一人の日本人として世界に挑みました。

元世界王者を下し、初の国際タイトル獲得

招待選手として出場したHiro-Kは予選免除で、決勝トーナメントからの出場となりました。

準々決勝でKrzyżowski、準決勝でLukiと、強豪国として知られるポーランドの2選手と続けて対戦しました。特にLukiは実績豊富な世界的フリースタイラーで、アッパーのスキルが高く評価されています。

 

そのLukiを破り、決勝では2013年に日本開催となった世界大会「Red Bull Street Style 2013 World Final」を制し、世界チャンピオンに輝いたSzymoとの対戦を迎えました。

ポーランド人との3連戦となりましたが、最後はHiro-Kが見事に優勝を果たし、自身初の国際タイトルを獲得しました。

出典:YouTube(Footstyle TV)

「SzymoやLukiは世界タイトルをいくつも獲得していて、数年前だと全く勝ち目がないような一流選手でした。その選手たちと戦えたことを誇りに思いますし、優勝できたことは“奇跡”みたいなものだと感じています」

Hiro-Kは当時を振り返り、優勝を“奇跡”と捉えながらも「奇跡を起こすための準備は十分すぎるほどにしてバトルに臨んだ」と述べており、奇跡が偶然ではなく必然だったことが分かります。

日本と世界での認識の差

また、今までRed Bull Street StyleやSuper Ballなど、世界の主要大会に挑んできたHiro-Kですが、日本と世界でのフリースタイルフットボールの“認識”の違いに戸惑いを感じていたようです。

「すごく乱暴に区分すると、世界ではスポーツ、日本ではアートなんです。同じフリースタイルフットボールでも、表現したいかっこよさの方向性が違うと感じています」

 

日本のフリースタイルフットボールは、技の構成や見栄えなどを意識し、オリジナリティやクリエイティビティを重視する傾向があります。

バトルではビッグムーブを入れるタイミングや、最後の締め方など、30秒間の「起承転結」を意識することが多いほか、音楽に合わせる“音ハメ”を意識するフリースタイラーも数多くいます。

 

一方で、世界のフリースタイルフットボールは、3DEXを1コンボに何回入れられるか、高難度のコンボをどれほど長く続けられるかなど、より難易度を重視する傾向にあります。

全員が共通してとは言えないものの、バトルでは高難度の技を30秒間に詰め込み、ジャッジや観客へインパクトを与えることに注力しているように思えます。

簡潔に言えば、日本は「作品」としての完成度、世界は「人間の限界」を追い求めていると言えるかもしれません。

 

両者は一長一短で互いに魅力があるものの、世界で戦う上では、この認識の違いを理解した上で戦う必要があります。

世界で戦うHiro-Kも「結果を求められる立場としては、認識の違いに苦戦を強いられる」と、その難しさを認めています。

出典:YouTube(hiro k)

自身が描くアートの完成、そして継承へ

日本と世界の認識の違いを踏まえた上でHiro-Kは、自身の目標を次のように語っています。

「アートを完成させること。フリースタイルフットボーラーとして、自分が表現したい理想を完成させることが目標です。これはフリースタイルを始めた時から今までずっと変わりません。

バトルやパフォーマンスは、自分のフリースタイルフットボールが受け手にどのように伝わっているのかを知る、答え合わせ的な役割を果たしています」

 

また、最近では大会運営やレッスン、アパレルを手がける「FREESTYLE PARK」を通して、フリースタイルフットボールの新たな価値観も提供しています。

この活動については「自分の価値観に共有してくれる、次世代のフリースタイラーを育てることにもやりがいを感じている」と語っており、今後はHiro-Kの描くアートが完成し、それが次世代にも継承されていくことが期待されます。

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投稿者プロフィール

Hiromu Tanaka
Hiromu Tanaka
中学生からフリースタイルフットボールを始め、大会やパフォーマンスなどに積極的に参加。現在はフリーランスで、スポーツを中心に様々なWebコンテンツを配信。JF3の運営をはじめ、フリースタイルフットボール界を盛り上げるべく、多岐に渡る活動を行っている。

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