フットバッグ世界王者から見た、日本のフリースタイルフットボール

フリースタイルフットボールとも密接な関係にある「フットバッグ」。その競技の世界大会が8月にブルガリアで行われ、日本の石田太志が総合優勝を果たし、世界一に輝いた。

石田は日本唯一のプロフットバッグプレーヤーとして活躍しているが、フリースタイルフットボーラーとも広い交友関係を持っている。今夏には日本一決定戦「JFFC 2018 supported by CHIMERA TV&GAMES」を現地観戦し、世界最大規模の大会「SUPER BALL」も動画で閲覧するなど、幅広くチェックもしている。

そんなフットバッグの世界王者が、日本のフリースタイルフットボールの印象について赤裸々に語った。

 

フットバッグを並行して行うことのメリット

石田がフリースタイルフットボールと本格的に接点を持ち始めたのは、2013年のRed Bull Street Style Japan Finalだった。日本一を決める同大会にゲストパフォーマーとして招待された彼は、会場で国内のトッププレーヤーと交流を図っていった。

出典:TAISHI ISHIDA 石田太志

「もともと球舞とはイベントで一緒になることがあって、面識はあったものの、彼ら以外のプレーヤーとは接点がありませんでした。僕自身はサッカーをしていたので、フットバッグよりフリースタイルフットボールと先に出会っていたら、フリースタイルフットボールを始めていたと思います(笑)」

その後はArtiSTAREやLA CLASSICを中心に、フリースタイルフットボーラーとの交友を深め、Red Bull Street Style Japan FinalやJFFCも毎年のように観戦している。

 

フリースタイルフットボールとフットバッグとの交流は、実は様々な場所で行われている。2016年には合同の大会が行われ、2017年にはLA CLASSICの2人(YOSSHIとYU-J)がフットバッグの全国大会に参戦し、表彰台に上ることもあった。

フットバッグは決して人口も多くもなく、レベルが高かった選手も年齢的な問題で引退してきている。石田いわく「日本のレベルはそこまで高くはなく、フリースタイルフットボーラーがフットバッグを始めれば、全国大会で表彰台を狙える可能性は十分にある」とのことだ。

出典:LA CLASSIC

また、フリースタイルフットボーラーがフットバッグを始めることによって得られるメリットもあるという。

「フットバッグを始めれば、クリッパーストールの技術はかなり上がると思います。フリースタイルフットボーラーのクリッパーストールは、フットバッグ目線でいえば、改善の余地が見られます。

最近はIbukiやAmaなど、クリッパースタイルのプレーヤーが多く出てきていますが、彼らはクリッパーストールが得意なだけあって、フォームが綺麗な印象はあります。クリッパースタイルをやりたい人は、フットバッグと並行して練習すると効果はあると思います」

 

また、フリースタイルフットボールもそうだが、フットバッグはいかにボールに対して脚が“ギリギリ”を攻められるかが肝になる。そのため、フットバッグは足の振りが必然的に小振りになっている。

そのフットバッグのギリギリを攻める感覚に慣れると、エアームーブもやりやすくなるとのことで、実際に「跨ぎやすくなった」という声もあるそうだ。

 

逆に、フットバッグのプレーヤーがフリースタイルフットボールをやり始めた例も海外では存在する。フットバッグのトッププレーヤーであるVasekやHonzaがその代表例である。

出典:Vasek.freestyle

 

出典:Honza Weber

フットバッグでは、両脚を器用に使いこなせるかが一つの採点基準となる。しかし、フリースタイルフットボールに関していえば、クリッパースタイルで両脚を使いこなすプレーヤーはいないに等しい。

「個人的には、クリッパストールで両サイドを使えるフリースタイルフットボーラーを見てみたいとは思います。エアームーブを含めて、両脚を使いこなせる人が出てくると面白いです。例えば1ターンに両脚でエルド(Eldo Around The World)を決められたら凄いですよね」

両脚で3DEXを決めることによって、ジャッジがどのような評価を下すかは定かではないが、たしかに両脚をバランス良く使いこなせるプレーヤーが出てくると面白い。

 

現地観戦したJFFC 2018を振り返る

石田は、2013年からは毎年のようにフリースタイルフットボールの大会を見続けている。最近では小規模な大会にも足を運んでいるが、昨年からの2年間で、日本のレベルの向上を感じていた。

「ここ2年間で、全体的にバリエーションやビッグトリックが増えてきて、大会の常連だった選手も、今までのベースにもう一段階アレンジが加わってきた印象があります。JFFCで新設された、キッズ部門のレベルの高さにも驚かさせました」

 

今年のJFFCは、トップ16の途中から観戦していたとのことだが、最も印象に残ったのは準決勝のKo-suke vs Tokuraだったという。

このバトルでは、3ターン目にTokuraがフロントフリップクラッチに何度もチャレンジしたが「もし同じ立場だったら、あそこまでリスクを冒すことはできなかった」と語る。

「僕なら1回ミスをした段階で、他の技に切り替えて勝負していたと思います。その僕の考えと真逆で、30秒間チャレンジを続けた彼の姿勢はかっこよかったです」

 

結果的には、あのチャレンジは観客の「もう1回やってくれるだろう」という期待にも応えていたし、“エンターテインメント”的には正解だったのではないだろうか。

「そのチャレンジをジャッジがどう見るかは難しいところです。あの時は4回チャレンジしていましたが、最後の1回で成功したとしても、3回はミスをしていることになります。相手のKo-sukeは安定したムーブを披露していたので、そのTokuraの1回の大技でジャッジが覆るかというと、判断し難い部分はあるはずです」

ジャッジの横田陽介は、大会中にチャレンジの姿勢も評価することを明かしていた。ただ、そのチャレンジがどこまで評価されるかは、ジャッジ個人の主観によっても変わる。ジャッジに明確な答えがないフリースタイルフットボールなだけに、判断は難しい。

 

【▷次ページ】大会における“メンタル面”の影響

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投稿者プロフィール

Hiromu Tanaka
Hiromu Tanaka
中学生からフリースタイルフットボールを始め、大会やパフォーマンスなどに積極的に参加。現在はフリーランスで、スポーツを中心に様々なWebコンテンツを配信。JF3の運営をはじめ、フリースタイルフットボール界を盛り上げるべく、多岐に渡る活動を行っている。

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