YoとKazaneが、世界で「得たもの」と「得られなかったもの」

チェコで行われた世界最大規模の大会「SUPER BALL 2018」のBattle部門では、Yoが3位で表彰台に上り、kazaneが4位に輝いた。

SUPER BALLにおいて、日本人史上初となるベスト4進出の快挙を成し遂げた2人だが、チェコでの3度目の挑戦で何を感じたのか。

 

個人として、そしてAir Technicianのメンバーとして。世界の舞台で「得たもの」と「得られなかったもの」を語った。

 

トップ4で表れたメンタル面の影響

-SUPER BALLは3年連続の出場となりましたが、1年目や2年目に比べて変化はありましたか?

Yo:良い意味でも悪い意味でも、チェコに慣れてきてしまって、いつも通りだという感覚がありました(笑) 大会自体も、過ごし方も、調整も。その慣れが、良い意味に働いていたとは思います。

バトルは前回大会やDAZN World Freestyle Mastersなどと比べても手応えがありましたし、もっと上にいけると感じました。

 

Kazane:1年目で、行けるところまでは行けても、その先が辛いんだろうなとは感じていました。ただ、出場を重ねるにつれて、だんだんと海外の選手たちが、細かい技や音ハメの部分にも反応してくれるようになって、日本人のパフォーマンスを評価してくれるようになってきたと思います。

もちろん前提条件でスキルは必要ですけど、そこを磨けば通用するというのは、3年間を通して実感できています。

 

-SUPER BALLの前にはJFFC 2018 supported by CHIMERA TV&GAMESがありましたが、出来はいかがでしたか?

Kazane:トップ16でYoと当たったのは、組み合わせが悪かったと思います。あれはでも、Yoがくじを引いて当てましたからね(笑)

正直、日本の大会に関しては優勝できなければ、それより下の順位はどれもあまり変わらないと思っています。どこで誰に負けたかは重要ではないですし、トップ16であの熱いバトルを見せられたことには満足しています。もちろん、悔しさはありますけどね。

 

Yo:僕は悔しさしかなかったですね。SUPER BALLもそうですし、僕の場合は生活もかかってきているので、負けてはいけない大会ではありました。

準決勝に関しては「あそこまで攻める必要はなかった」とも言われたんですけど、僕は攻めるべきだと思っていました。日本一になるために戦っているわけではないし、世界で戦うためには、もう一段階ギアを上げないと勝てないと想定していたので。

あの時は疲れがすごくて、体力が持たなかったですね。ただ、このペース配分ではダメだということを学んで、SUPER BALLに生かせたことは良かったと考えています。JFFCが終わって、ほんの少しの期間しか空きがなかったので、そこまで改善はできなかったですけどね。

 

-SUPER BALLでは、日本人の史上最高位となるベスト4まで勝ち上がることができましたが、その要因はどこにありましたか?

Yo:正直、最近は自分のムーブにあまり集中ができていないんです。ずっとバトルをしながら頭の中で何かを考えていて、かますムーブをできなくなってきたし、逆に無難にできるようになってきたというか。

その感覚はすごく嫌ですけど、今大会に関しては、様子を見ながらやれることが上手くハマった気はします。

 

Kazane:気持ちの面だけだと思います。僕はYoと違って、自分が楽しめたら勝てると思っていて、今大会はかなり楽しめていました。

準決勝で負けたErlendだけは別格で、それ以外は勝てるという自信があったので、そこまで気負いもせずに戦うことはできました。

 

-トップ16を見ると、昨年よりはレベルが低いような印象も受けました。

Yo:レベルの高い選手が出ていなかったり、トップ32で負けたりしていたので、たしかにそれはあったと思います。DAZN World Freestyle Mastersの時のほうがレベルは高かったですね。

 

Kazane:Ricardinho、Pedrinho、Kalldoffが出ていない影響もありましたね。ただ、トップ32から強豪選手と当たる可能性は危惧していました。

 

-トップ4で勝ち切れなかった原因はどこにあったのでしょうか?

Yo:途中で完全に自分を見失っていました。初めてバトル中に音楽が聴こえなくなって、身体も思うように動かなくなって。なぜかは分からないですけど、さっき話した集中できていなかったことも原因にあるかもしれないです。

出典:STREET SOCCER JAPAN

あの時は疲れてもいなかったし、ネタも残っていたんですけど、ムーブしたいとも思わなかったので。それまでは考えてやれていたはずなんですけどね。1ターン目は普通にできていたんですけど、2ターン目から急におかしくなって、何も見えなくなりました。

この経験は初めてだったので、自分でも良く分からないです。

 

Kazane:Yoは特にプレッシャーも感じていなかったと思いますけど、2ターン目から急激に覇気がなくなったのは分かりましたね。

 

Yo:負けて悔しいというより、なんで?という気持ちが強かったです。

 

Kazane:僕はErlendと対戦しましたけど、彼はダントツで強かったですね。音を聴くことは抜きにして、今のフリースタイルフットボール界で最強だと思います。彼に勝つのであれば、単純に技術の面も上げないといけないですね。

あとは僕もYoと同じで、準々決勝までは気持ちが乗っていたものの、準決勝に入る前に、その感覚がなくなっていて。体力はあったし、次はErlendをぶっ倒そうと思っていたのに、なぜかメンタル的にブレていました。

出典:STREET SOCCER JAPAN

動画で見返してみたら、これは僕が負ける時のパターンでもあるんですけど、相手のムーブを立てていたんですよね。フリースタイルフットボールを楽しみすぎて、相手を客観視してしまっていて、バトルできていなかったというか。

やっていて気持ちよくなかったバトルではありましたね。ただ、それを差し引いてもErlendの技術は半端なかったです。

 

日本人がSUPER BALLに与える刺激

-結果的に、3位決定戦で2年連続の対戦が実現しましたが、心境としてはいかがでしたか?

Yo:準決勝で負けて完全にガス欠していましたけど、とりあえず見せてやるか!と気合いは入っていましたね(笑) JFFCでやったようなバトルをもう一回やりたいと思っていました。

 

Kazane:日本人の空気をもっと見せたいという気持ちはありました。決勝であれば、また別の気持ちだったと思いますけど。

出典:STREET SOCCER JAPAN

Yo:1ムーブ目を見た時点で、Kazaneは死んでいましたけどね(笑)

 

Kazane:あの時はもう余力がなかったので...。

 

Yo:俺も途中で、無理だわ...ってなりました(笑)

 

-ジャッジに日本のとっちーさんがいたことも、勝敗に良い意味で影響を与えていた部分はあったのでしょうか?

Yo:正直、ジャッジの席が暗くてあまり良く見えなかったです(笑)

 

Kazane:そこまで感じなかったですね。SUPER BALLは毎年、あまりジャッジを気にしてはいないです。

ただ、ジャッジ席に日本人がいることが、良い意味での違和感はありました。中学から憧れている先輩が、あの場にいることが嬉しかったですね。

 

Yo:それは僕も感動しましたね。

 

-SUPER BALLのジャッジに日本人が呼ばれたということは、この大会にも徐々にスタイルの部分が認められてきたのではないでしょうか。

Kazane:Daigoro(イタリア)も呼ばれていましたしね。

 

Yo:Daigoroはかなりのひねくれ者で、他の人とは違った価値観を持っているので、そういう人がジャッジに呼ばれ始めたことは、大会自体が少しずつ変わってきている証拠でもあると思います。

日本のスタイルが受け入れられているというか、自分のスタイルを持つことの価値を認めてきてくれている風潮は、少しだけあります。

日本人がステージに立っている時に、観客に「日本人LOVER」がいるんですよ。日本人側に来て応援してくれる人が10人くらいいて(笑) あれは初めて見ましたね。

 

Kazane:Instagramでも「日本人のバイブスは真似するべきだ」と書いている人がいて、少しずつ伝わってきているのかなと思います。

 

-その影響が、他の選手のパフォーマンスに影響しているとは感じましたか?

Yo:それは感じなかったですね。

 

Kazane:僕も感じなかったです。準決勝でErlendが僕のターンの後に、僕の動きを真似ているシーンがあって、試合後に他の選手から「Erlendがお前のバイブスになってたじゃん」と言われたことはあって。

そうやってバトルの中で僕のバイブスを感じて、会話しようとしてくれていることは嬉しかったですけどね。

 

【▷次ページ】今大会で「得たもの」と「得られなかったもの」

Follow me!

投稿者プロフィール

Hiromu Tanaka
Hiromu Tanaka
中学生からフリースタイルフットボールを始め、大会やパフォーマンスなどに積極的に参加。現在はフリーランスで、スポーツを中心に様々なWebコンテンツを配信。JF3の運営をはじめ、フリースタイルフットボール界を盛り上げるべく、多岐に渡る活動を行っている。

お気軽にご相談ください!

JF3を運営する株式会社Ball Beatでは、パフォーマー派遣やイベント企画・運営、スクールなど、フリースタイルフットボールに関する様々な事業を行なっております。

そのほかにも、ストリートスポーツやサッカーに関わることなど、幅広くご協力いたします。これらに少しでも関わることはまず一度、お気軽にご相談ください!