シーンの外側への影響力を。世界で活躍する3人が求める、大会の価値

Air TechnicianのKazane、Yo、Ibukiによる対談企画。前編ではSUPER BALLでのエピソードや、業界の問題点について触れたが、後編では数多の大会に出場して感じたことを赤裸々に語った。

“外側”に感動を与えられるカルチャーに

-YoはJFFC 2017を優勝して初めて日本一になったけど、何か変わった部分はある?

Yo:正直に言うと、ないですね。

Kazane:これでYoはどんどん上がっていくのかと思ったけど、そこまで変化はないよね。

Yo:優勝した!って自分で言って終わり。メディアに大きく取り上げられることも、昔に比べて今はないから。

Kazane:見に来てくれる人もまだまだ少ない。前に、音楽に合わせて踊るみたいなアプリにふざけて動画を投稿して、プロフィールにツイッターをインスタを載せていたら、フォロワーが1日で何十人と増えたことがあって。正直、大会で優勝するよりもそういうほうが影響力はあるんじゃないかな(笑)

Ibuki:俺もたまたま大きなアカウントに取り上げられて、寝て起きたらフォロワーが3千人から1万人くらいになってた(笑)インスタからイベントのオファーが来ることも結構多いし、ACLのパフォーマンスもそこからだった。

Kazane:今俺らが大会で勝つことの意味は、シーンの内側に対する影響力とか、経歴作りだけだから、優勝して何かにつながることは少ない。それよりも、シーンの外側への影響力が欲しい。

Ibuki:シーンの外に目が向いてるフリースタイラーは少ないよね。BMXのウッチー(内野洋平)さんが主催してるFLAT ARKは、本当に神戸という街全体を巻き込んでいて、行政も動いてるレベル。そういうところは参考にしていきたいと思う。

俺が開いてるShowBoxはショーケース形式で、外向きな大会ではあるけど。ただ、そういうコンセプトでやっても、参加するプレーヤーが外に発信するようなショーや立ち振る舞いができているかと言うと、まだまだ難しい部分もあるし。

Yo:一瞬で変える打開策はないから、徐々に変えていかないとね。小さな盛り上がりを各地でたくさん作って、大きくしていくみたいな。今はどこの地域も盛り上がってすらいない。ローカルで小さな大会を開くことすらなくて、関東の大きな大会ばかりだから。

そういう意味で、アングラが育ってない印象はあるね。昔のRed Bull Street Style(以下RBSS)とかF4みたいに、地方予選があって、最後に全国大会があったほうが面白いのに。

Kazane:地方予選を勝ち抜いて、地元を背負って戦ってるというストーリー性もできるしね。

Yo:JFFCのベスト32も、もっと選ばれしオールスターメンバーであってほしい。

Kazane:その中に新星が何人かいて、「あいつやべえぞ!」と噂になれば面白い。昔はRBSSが年に一度の祭りで、地方予選を勝ち抜いた強者が集まる大会。F4は下の世代も気軽に出られる敷居の低い大会という感じで、良いバランスだった気がする。

そうやって考えるとシーン自体は下降気味なのかな。あとはもっと他のストリートとかスポーツの良いところから学んでいかないといけないし。

Ibuki:いろいろなものに目を向けて、いろいろなことを感じて吸収した上で、新しいものを作っていきたいよね。

Kazane:俺は結構フリースタイラーを家に呼んで、ダンサーの動画を見せたりしてるよ。フリースタイルフットボールは一般の方から見ても、鳥肌が立つショーケースというのがなかなかないと思うから。

例えばダンスならたった一撃で衝撃が生まれたり、アーティストなら一声発しただけで会場が沸いたり。そういう他人に何か感動を与えられるカルチャーにならないと。

エンタメ要素の必要性

-名バトルと言われるものが少ない印象はあるよね。

Kazane:名バトルと言われたら、2008年のRBSS World Final決勝の(横田)陽介さん vs Seanですかね。その次の大会の決勝なんて誰も覚えてないし、Tokuraさんが優勝した2012年の決勝のバトルですら、内容も覚えてないと思うし。俺らが若手に「このバトルはヤバかった!」と動画を見せることも少ない。今の大会でも、この対決が見たい!と思うバトルはあまりないかな。

-個々のフリースタイラーを見ても、キャラ立ちした人は限られている気はする。

Ibuki:カルチャー自体にエンタメ性があっても、エンタメ性がある“人”は少ないと思います。

Kazane:そういう意味では、North Actorsは昔からリスペクトしてる。自分たちで音を作ったり、パフォーマンスに笑い要素を交えたり。

Ibuki:たしかに。JFFC 2017で一番面白かったのも、Gyozaさん vs KUROさんだったし。

Kazane:大会後にベストクリップ集を作ってても、そういう面白いバトルはやっぱり使いたくなる。会場も盛り上がってるし、笑顔が増えてるし。

全員が全員、エンタメに走らなくても良いとは思うけどね。それはそれで大会がグダってしまう面もあるから(笑)キング・オブ・バトラーとエンターテイナーが混在してる中で、後者がもっと増えれば良いかな。

Ibuki:なんとなくだけど、キング・オブ・バトラーとエンターテイナーが対決すると、どちらも戦い方が違うから、二人とも波に乗り切れずにバトルが終わってしまう印象もあるけど。

Kazane:スキルとエンタメが上手く噛み合ってたバトルで思い浮かぶのは、俺 vs MOSAさんかな。FREESTYLE FESでもJFFCでも。

-大会では全体的に“バトル”なのに戦っている感のなさはあるよね。

Kazane:コンテストですね。

-そういう意味では、Wah Wah Wahは新しい提案でもあったね。ただ、あれも主催側から「もっと観客を意識してほしい」と指摘していたけど。

Ibuki:予選の時はいつもの大会と変わらない感じでしたけどね。2日目は少し良くなったと思います。

Yo:Wah Wah Wah!!!は怪我の影響があって、俺はバトル部門には出れなかったけど、見ていて“バトル”をしてる人は少なかった印象はある。あれだと生でバトルを見なくても「動画で見れば良いじゃん」ってなる。動画コンペティションのほうが面白いかもしれない。

Kazane:自分が用意してきたものを相手に見せるというより、ジャッジに審査してもらうという心意気が強すぎる。ミスしないように頑張るみたいな。

Ibuki:相手に見せるつもりはないのに、対面でバトルしてるのは違和感がある。

-逆に、審査してほしいという心意気で、ジャッジのほうだけを向いてバトルするのもありかも。

Kazane:それはそれで一種の表現方法ですよね。相手がその姿を見て「こっち見ろや」ってなれば、逆にバトルが熱くなるかもしれないし。ただ、どちらでもなく淡々とこなす人が多い。

Ibuki:みんな、めっちゃ自信なさげに見えるしね。

Kazane:そういう意味では昔のバトルのほうが面白かった気もする。バトルが終わって泣いてる人もいたし、今はそうやって感情が溢れ出ることは少ないかも。

例えばYoと若手がバトルするとして、やる前からYoに負けることはある程度分かってると思う。そんな状況で負けても、あまり悔しいという気持ちは生まれない。「Yoさんやっぱり上手いですね」で終わっちゃう。

Ibuki:「戦うことができて嬉しかったです」みたいな。だいたい笑顔で握手して終わるし。

Kazane:そうじゃなくて、めっちゃチャレンジしたけど負けて、悔しくてYoのことすら見ないで帰るとかね。

-負けて悔しいという感情を表に出す人は少ないね。笑顔で握手して終わって、裏で泣く人はいるけど(笑)

Kazane:ステージで泣けとまでは言わないけど、その場で悔しさを露わにしても良いんじゃないかな。そのほうが見てる側の感情も動かされるし、話題にもなるし。

俺らがエアテク同士でバトルする時は、お互い楽しくなるのが分かってるから、勝ち負け関係なく終始笑顔で終わることもあるけど(笑)

一つ一つの大会に価値を

-世界大会を見ると、1ターン30秒の中で、だいたい27〜30秒あたりに締め技をやるじゃない。でも締め技をする時にはもう相手がリフティングを始めていて、次のターンに向けて準備していることが多い。それにはすごい違和感を覚える。

Yo:それにもいろんな理由はあると思います。

Kazane:30秒の中で、自分が考えてきた何かを見せないといけない、というのはあるだろうけど。

Yo:そもそも30秒ってのがどうなの?30秒にしてるからそういう現象が生まれるんじゃないかな。

Kazane:だからBC Oneが良いんだって!

Yo:間違いない(笑)

※Red Bull BC One・・・ 世界最強のB-Boyを決定するブレイクダンスの世界大会。

Kazane:音楽だけ先に鳴り始めて、どっちが先に出るかも分かんないし、出てきたら、うおー!ってなるし。

Yo:ターンを終えたら、ぶん殴るモーションを入れて、来いよ!みたいな。

Kazane:そんなに体力のない人は、短い時間でバシッと決めて終わることもできるし。そっちのほうがスタイルも色濃く出るよね。エアームーバーだったら15〜20秒のヤバいコンボをバシッと決めて、ブロックだったら1分間くらいのヤバいフローを決めて終わるとか。

Ibuki:現状の大会では、30秒間をいかにノンストップでやり続けられるかが肝になってる。

-だからこそErlendとかRicaldinhoみたいな、体力もあって30秒間ハードコアを続けられるフリースタイラーが勝ち残ってる。

Ibuki:だから大会前はそういう練習になりますよ。フローとフローの間を短くして、いかに次に早くつなげるか。そのためのトランジションも練習するし。

-そうなると抑揚とかストーリー性がないバトルになるよね。最初はゆっくり入って徐々に締めに向かって上げていくとかもなく、ずっと上がっている状態になる。

Kazane:JFFCも予選は30秒で良いけど、決勝ラウンドは時間無制限にしたほうが見ているほうも気持ち良いかも。

Ibuki:一度そういう大会を別で作って、どういうふうになるのかを見てみたい。完全な招待制にして、日本のトップ・オブ・トップだけでやっても面白そう。そのために国内でランキングを作っても良いと思う。

大会ごとにポイントを付ければ、各地でやっている大会にも意義が生まれるから。良く『大会って誰でも出られるの?』『呼ばれて行くの?』と聞かれて、だいたいの大会は誰でも出られるから、誰でも出られるよって言うと『ああ、そうなんだ』って。

招待制の大会ができれば、見る側からしても、国内で選ばれたトッププレーヤーが集まっている時点で、パッケージとしての価値観が上がるはずだから。自分が大会に出ると告知する時にも「選ばれて行ってくる」って言うと、周りからの扱いも変わると思う。

-この大会に勝てばこういう価値があると事前に分かっていれば、プレーヤーのモチベーションにもなるし、参加者も増えるかもしれないね。

Yo&Kazane主催の大会が初開催!

YoとKazaneの主催する「VIBES KINGS」が、4月14日(土)に東京・スターライズタワー(スタジオビーナス)で開催!

VIBES KINGS

日付:4月14日(土)

時間:OPEN 13:30 START 14:00

会場:スターライズタワー(スタジオビーナス)

※年4回開催予定。各大会で順位に応じてポイントを付与し、年間ランキングを決定。ランクによって来年度からは、トップ16以上は1部トーナメント、それ以下は2部トーナメントへとプレイヤーが振り分けられる。

大会ツイッターアカウントはこちら

Follow me!

投稿者プロフィール

Hiromu Tanaka
Hiromu Tanaka
中学生からフリースタイルフットボールを始め、大会やパフォーマンスなどに積極的に参加。現在はフリーランスで、スポーツを中心に様々なWebコンテンツを配信。JF3の運営をはじめ、フリースタイルフットボール界を盛り上げるべく、多岐に渡る活動を行っている。

お気軽にご相談ください!

JF3を運営する株式会社Ball Beatでは、パフォーマー派遣やイベント企画・運営、スクールなど、フリースタイルフットボールに関する様々な事業を行なっております。

そのほかにも、ストリートスポーツやサッカーに関わることなど、幅広くご協力いたします。これらに少しでも関わることはまず一度、お気軽にご相談ください!